講師:御手洗 光祐 (大阪大学)
題目:量子計算入門
講義内容
量子コンピュータは、量子重ね合わせなど量子力学の基本原理を計算に応用することにより、特定の計算タスクを従来のコンピュータよりも高速に解くことができる計算機です。本講義では、量子ビットや量子ゲートなど、量子計算の基礎的な知識を抑えたのち、量子加速が期待されている代表的な量子アルゴリズムをいくつか紹介します。講義の最後には量子プログラミングのハンズオンも予定しています。
事前知識
テンソル積を含む線形代数を理解していることを前提に講義を進めます。ハンズオンはpython で行う予定です。
講師:松下 雄一郎 (Quemix)
題目:エラー耐性量子コンピュータによる量子化学計算の最近の展開
講義内容
我々の会社では、エラー耐性量子コンピュータ(FTQC)に向けた量子アルゴリズム開発を行っている。特に、量子コンピュータ初期の適用先として量子化学計算が挙げられており、我々も量子化学計算むけのFTQCアルゴリズムの開発を行ってきた。その中で、古典コンピュータでも知られた"虚時間発展法"をFTQC上で実行するアルゴリズム"確率的虚時間発展法(PITE: Probabilitstic Imaginary-Time Evolution)"を開発した[1-4]。量子コンピュータの原理から始めて、量子アルゴリズムの作り方、量子化学計算理論、量子コンピュータがどのように量子化学計算を発展させるか、を説明する。
[1] Phys. Rev. Research 4, 033121(2022).
[2] Phys. Rev. Research 5, 043048(2023).
[3] npj Quantum Information 9, 112(2023).
[4] Phys. Rev. Research 6, L022041(2024).
事前知識
・初歩的な線形代数
・初歩的な量子力学(演算子、量子重ね合わせなど)
講師:明石 遼介 (量子科学技術研究開発機構(QST))
題目:密度汎関数理論の基礎と応用
講義内容
第一原理計算に基づく物質の電子状態シミュレーションは、今や物性物理研究に欠かせないインフラとなっている。本講義では,シミュレーションにおいて実用的な計算精度を達成する基礎となっている密度汎関数理論について、その構造と主要な成果を概観し、さらなる手法改善にとりくむための基礎知識を提供する。また、密度汎関数理論にもとづく第一原理計算の応用例についても、講演者の研究に関連する話題を主として紹介する。
事前知識
第二量子化,学部程度の統計力学
参考文献:
1, W. Kohn, “Nobel Lecture: Electronic structure of matter—wave functions and density functionals”, Rev. Mod. Phys. 71, 1253
2, Y. Nomura and R. Akashi, “Density functional theory”, Encyclopedia of Condensed Matter Physics (Second Edition) Vol. 1, 867 (2024) (unpublished ver. is available as arXiv:2210.07647)
講師:秋山 進一郎 (筑波大学)
題目:格子場の理論におけるテンソルネットワークと繰り込み群
講義内容
素粒子物理学の一分野である格子場の理論への応用という観点から、テンソルネットワークに基づく繰り込み群手法について講義する。フェルミオンとボソンを含んだ理論に対するテンソルネットワーク表現の構成方法について説明した上で、その表現形式を活用した繰り込み群による計算・解析手法を紹介する。
事前知識
特に仮定しない。
講師:金森 逸作 (理化学研究所)
題目:場の量子論と格子QCD入門
講義内容
クォークとグルーオンの相互作用を記述するQCDは、低エネルギー領域では結合定数が大きく摂動展開によらない計算手法が重要になる。QCDの非摂動的な定式化である格子QCDのシミュレーションを念頭に、経路積分表示の場の量子論のモンテカルロ・シミュレーションを紹介する。
事前知識
学部レベルの量子力学、解析力学(ラグランジュ形式)、電磁気学(ゲージポテンシャル)。さらに、経路積分量子化や電磁気学の相対論的定式化の知識があることが望ましい。
講師:髙島 千波 (早稲田大学)
題目:量子化学入門
講義内容
量子化学は量子力学を用いて原子や電子の振る舞いを記述し、化学現象を理論的に説明することができる学問分野です。近年のコンピュータや量子化学計算プログラムの発展に伴い、理論研究者だけでなく実験研究者にも広く使われるツールとなってきています。本講義では量子化学の入り口として、Hartree–Fock法を概観します。さらに量子化学計算プログラムで用いる作業方程式を導出します。Hartree–Fock法に対する自己無撞着場計算をプログラム実装できるようになることを目指した内容にしたいと思います。(時間の都合上、プログラミングの演習は考えていません。ご了承ください。) 参考文献は中井浩巳『手で解く量子化学I』(丸善出版) などです。
事前知識
特になし。
講師:大槻 純也 (岡山大学)
題目:強相関電子系の定量計算 DFT+DMFT法を中心として
講義内容
d電子やf電子を含む強相関電子系化合物の物性の記述には、密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算だけでは不十分なことが多い。そこで、DFTにより得られたエネルギーバンドを出発点として、多体効果を改めて考慮に入れることで強相関物性を記述する方法が発展している。DFT+DMFT法はその一つで、動的平均場理論(DMFT)により準粒子の形成や相転移を議論する。講義では、DFTによるモデル化からDMFT法の基礎と応用を紹介する。
事前知識
第二量子化記法(生成・消滅演算子)を用いた多体ハミルトニアンに慣れていること。また、松原グリーン関数に関する基礎知識があることが望ましい。
講師:引原 俊哉 (群馬大学)
題目:テンソルネットワークを用いた量子多体系の研究
講義内容
テンソルネットワークは、量子多体系の波動関数のような高ランクテンソルを効率よく記述する表現形式として、様々な分野の問題に適用され、大きな成功を収めている。本講義の前半では、テンソルネットワークの基礎について説明した後、密度行列繰り込み群(DMRG)法で用いられている行列積状態(Matrix-Product State)を例に、テンソルネットワーク法で用いられる基本的なアルゴリズムについて解説する。後半では、研究対象である物理系・高ランクテンソルに応じたネットワーク形状の拡張・最適化という観点から、多様なタイプのテンソルネットワークについて紹介し、その量子多体系研究への適用について議論する。
事前知識
学部レベルの知識、特に数学(線形代数)、量子力学、統計力学の知識は前提とします。特定の研究分野についての専門的知識は前提としません。
講師:田中 章詞 (理研)
題目:機械学習入門:基礎から最近の話題まで
講義内容
深層学習の成功以来、近年の機械学習技術の発展は目覚ましく、様々なデバイスに搭載されるばかりか、物理や化学などの科学技術分野にまでその応用範囲を広げています。そのような中で機械学習とはどういう技術なのか、どのような数理的背景があるのかを知っておくことの重要さは年々増してきているように思います。そこで本講義では、簡単な例を用いつつ、機械学習の基本的なアイデアと目標を説明し、その立場から近年の発展を概観してみるつもりです。
事前知識
事前知識としては、理系の学部で習う線形代数や微積に加え、簡単な確率論の知識があるとより良いですが、それがなくてもわかるように話すつもりです。
講師:Nvidia
題目:GPU コンピューティング入門
講義内容
昨今の機械学習技術の進展を受けて、科学技術分野の研究に機械学習を応用する試みが増えてきています。そのような状況の中、機械学習で大量のデータを処理するにあたり、計算時間がボトルネックになり得るというのもまた事実で、それらの処理を加速することが、研究の生産性向上に不可欠となってきています。本講義では、機械学習を GPU で加速するための方法について紹介し、ハンズオンを通して GPU コンピューティングを体験してもらいます。
事前知識
Linux の基本的な操作, テキストエディタ (emacs, vim など) によるファイルの編集